∀ガンダム:総括

 「∀ガンダム」を振り返ります。

良かった点

1 キャラが魅力的
 魅力的なキャラが多いです。
 ディアナは癒し系ですし、ロランは本当に性格がいいですし、ギム・ギンガナムは盛り上げ役として圧倒的なパワーを持っています。キャラクターに恵まれているのが、∀ガンダム最大の長所です。


2 サウンドが魅力的
 月の繭、Moonなど、サウンドに恵まれています。∀ガンダムの牧歌的雰囲気と、サウンドの神々しさが絶妙にマッチしており、えもいわれぬ雰囲気をかもしだしています。


3 ストーリーが壮大
 ストーリーの根幹にあるのは、ディアナの地球帰還作戦です。そして、地球帰還作戦の真の目的は、ディアナが「人の生と死のある生き方」を貫徹することにあるので、これが本作のメインテーマといっていいと思います。人生観それ自体がテーマなので、ストーリーも自然と壮大にならざるを得ません。
 細かい点を見ても、未開の文明人であった地球人が、いきなり宇宙船に乗って月に旅立つなど、度肝を抜かれるような展開が数多くあり、見応えがあります。


4 富野節
 これは賛否両論あると思うのですが、本作では富野節が大爆発しています。45話「敵、新たなり」のミドガルド、49話「月光蝶」全体、などが顕著です。とにかく何を言っているのかわかりません。そもそも聞き取りづらいですし、聞き取ることができたとしても、その意味を理解することは非常に困難です。
 こういうと、本来長所になどなりえないものです。しかし、それでもこれはこれで面白いんですね。終わりよければすべてよし。原理がわからなくても、結果として面白いのであれば何の問題もありません。そういう意味では、雰囲気アニメといっていいのかもしれません。
 あとは、ネーミングセンスが秀逸。どこから出てきたのかまったくわからないネーミングが多いのですが、言われてみると一番しっくりくる、といった名前が多く、感心してしまいます。
 人名ではロラン・セアック、グエン・サード・ラインフォード、フィル・アッカマン、ポゥ・エイジ、テテス・ハレ、アグリッパ・メンテナー、ギム・ギンガナムなど。
 そのほかでは、黒歴史、ビシニティ、ウォドム、ザックトレーガー、ジャンダルム、アスピーテなど。
 ガンダムSEEDなどを見ると、ストライクガンダムとか、ディスティニーガンダムとか、とってつけたような名前が多いですので、やっぱり富野監督のネーミングセンスはすごいと再認識させられます。

悪かった点

1 展開が唐突
 これは長所でもあるのですが、展開があまりに唐突で、何が何だかわからなくなることが多々あります。ロランがディアナ・カウンター本部に赴いたり、レット隊が突然退場してしまったりするところなど。フィルのサンベルト共和国建国のところなどもそうでしょうか。
 物語がどこへ進んでいるのかわからなくなる感じで、少し落ち着きが悪いです。基本的には、地球帰還作戦開始→ミリシャとディアナ・カウンターの小競り合い→アグリッパとの直談判のため宇宙へ→ギンガナム隊暴走→地球で最終決戦、という流れなのですが、これが見えづらいという人も多いのではないでしょうか。


2 作画
 基本的にはまずまずの出来なのですが、ひどいときは本当にひどいです。作画に注意を払わない人でも一目で気づくであろうレベルです。お金の問題もあるだろうと思いますが、正直見ていて気分のいいものではありませんでした。
 逆に、いいときはとことんいいので、一概にダメとも言いにくいところもあります。45話「敵、新たなり」など、素晴らしいと思いますし。

全体の感想

 50話も必要だったのかといわれると、全面的に肯定することは困難です。「ローラの牛」など、うまく編集すれば一話まるごと消してもいいような回もありますし。そういう意味では、やや冗長なアニメだという評価も可能です。
 しかし、作品全体の異様なテンポ、牧歌的な雰囲気など、見ていて素直に楽しめる部分が多く、全体として安心して見られるアニメだと思います。ガンダムシリーズの中でも特にお勧めできるアニメです。