続・崖の上のポニョ
疑問点を列挙してみます。
1 なぜ世界がおかしくなってしまったのか
フジモトの家にあった井戸のようなものが鍵を握っているのだと思います。しかし、これが何なのか、作中ではまったく説明されていません。原理が科学的でなければ説得されないということではもちろんありませんが、ファンタジーであってもファンタジーなりの根拠がなければ、視聴者はついていけません。
水位が異様に上がるというのも、作中世界がポニョの存在をそれなりに受け入れることができるような世界だっただけに、おかしなことだと認識しづらかったです。ここが、その後のストーリーの理解に支障を来した主要な原因だと思います。
2 なぜポニョはすぐに眠ってしまうのか
魔法の力で人間になっているに過ぎず、魔法の力が弱まるにつれて行動能力が失われていくということでしょうか。なんとなくそんな気がしないでもないですが、やはりこの点についても説明はありません。
子供だからという理由は考えにくいです。宗介はあまり眠くならないからです。
3 船の墓場とは何なのか
宗介のお父さんが発見する船の墓場ですが、これは一体何なんでしょうか。また、ここでグランマンマーレが現れることに何か意味はあるのでしょうか。特にやばい事態が生じることなく、何事もなかったかのようにイベントが終了しますが、このエピソードになんの意味があるのでしょうか。説明はまったくありません。
4 なぜポニョはトンネルを抜けることに拒否反応を示したのか
フジモトの近くに行きたくなかったからでしょうか。トンネルの「意味づけ」が何らなされていないので、ポニョがこんな意味深な反応をする理由がわかりません。
5 なぜおばあさんは走ることができるようになったのか
そもそも、水中におばあさんが存在することが不思議です。しかし、これは周囲の状況からして、フジモトの魔法のおかげだと合理的に推認できます。
おばあさんが走ることができるのも、フジモトの魔法のおかげなのでしょうか。しかし、人間嫌いのフジモトが、わざわざおばあさんを助けるということは考えにくいです。また、おばあさんは「あの世もいいもんだね」などと発言していますが、これには深い意味があるのでしょうか。すでに死んでいるとか?しかし明らかに生存している宗介と再会できているので、この線は考えにくいです。
6 なぜ世界が修復されたのか
ポニョと宗介が、リサやおばあさんのいる海中のスペースにたどりつくことで、世界が修復されたと解釈するのが素直です。しかし、なぜこれで世界が修復されるのでしょうか。何の説明もありません。
また、フジモトがこれを阻止しようとした理由もよくわかりません。世界を修復させたくなかったのでしょうか。しかしその割には、月のことを気にするなど、世界がおかしくなってしまったことを危惧しているようです。ある程度ハードルを上げないと、世界を修復することはできないから?しかし、そのようなマッチポンプで世界のあり方が決定づけられるというのも、簡単には腑に落ちないところがあります。
あと、グランマンマーレとは何者なのでしょうか。重要人物のようですが、泳いでいるだけで特に何もしていないように見えます。いろいろ知っているようですが、それならきちんとみんなに説明して欲しいです。「世界は救われました」と断言しますが、根拠も何もないので、視聴者はついていくことができません。涙を流して喜んでいるおばあさんにも違和感を感じます。
総じて、よくわからないことが多すぎます。もちろん、作者である宮崎監督にとっては、説明不足の部分に十分な「意味づけ」がなされているので、上記のような違和感は感じようがないと思います。
しかし、映画を見るのは視聴者です。作品が自己完結的に視聴者に情報を与えない限り、視聴者が作者ではない以上、説明不足の部分は意味づけのしようがなくそのままの状態で伝えられ、結果として視聴者には違和感だけが残ります。
結局、宮崎監督が好き放題遊んだ結果が上程されたというほかなく、よほど宮崎監督が好きな人でない限り、うまく受け入れることができない作品になってしまったというほかありません。
他にもいろいろ感じるところはありますが、きりがないので、ひとまずこの程度で「崖の上のポニョ」感想とさせていただきます。
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