月に繭 地には果実

 ∀ガンダムのノベライズ作品です。
 とはいえ、原作に忠実なわけではありません。むしろ、原作にインスパイアされたオリジナル作品というのが正確かもしれません。ポゥは登場しませんし、リリ・ボルジャーノも登場しません(幼少時に病死したとされます)。コレン・ナンダーすらいないのです。
 かわりに、テテス・ハレが大活躍します。原作では不遇な扱いでしたが、もっと活用できるキャラクターでしたので、ノベライズでの抜擢は大成功だと思います。性格は基本的に変わっておらず、フィルに命じられてディアナを暗殺しようとします(原作では、ディアナを突然石で殺そうとします。)。フィルと愛人関係にあったりと、基本的にポゥとコンパチの位置づけです。


 作品の大筋も異なります。核弾頭は爆発しますが、これはテテスが爆発させます。マニューピチも攻略しません(ウィルゲムの自力推進でザックトレーガーに至ることができます)。グエンが裏切るのは原作通りですが、裏切り方が半端じゃありません。冬の宮殿ごと、ウィルゲムの主砲でディアナを殺そうとしたりします。ギム・ギンガナムはザックトレーガーで早々に死んでしまいますし、ハリーがカイラス・ギリを作動させて、アグリッパや地球のフィルを殺したりします。
 総じて原作の牧歌的雰囲気は後退し、ハードボイルドな展開が続きます。これには賛否両論ありますが、僕は楽しめました。特にグエンの扱いについては、原作よりもずっとダイナミックで、魅力的でした。


 原作を見た後に読めば、より一層楽しめる本です。


月に繭地には果実―From called “∀”Gundam

月に繭地には果実―From called “∀”Gundam