アルバイトをやめました

5年間続いたアルバイトでしたが、本日をもって終了となりました。


アルバイトとはいえ、5年間も続けていると流石に尋常でなく愛着がわいていました。最終業務が終わっても、なかなか職場を出ることができませんでしたね。
まして塾講師という職業の性格上、人と人との関わり合いが比較的深いので、過去に出会った生徒・講師のことが走馬灯のように思い出されました。


特に印象深いのはやはり生徒です。
「今どきの若い奴は…」と、若者の堕落が叫ばれることの多い昨今ですが、少なくとも僕が触れ合った生徒の中ではそうした子は例外中の例外で、基本的にみんなとても純粋でいい子でした。純粋すぎて、見ているこちらがまぶしくなってしまうくらいです。みるからにおとなしそうな子も、ルーズソックスやミニスカートをがしがしキメてくる女子中高生も、みな同様に純粋でした。


そんな彼らが、講師である僕を信頼して、宿題をこなしたり、アドバイスを聞いてくれたりするわけです。純粋な視線で。
そうなると、こちらも自然と「手を抜いてはいけないな」という気持ちになってしまうものでした。授業時間を大幅に延長して、夜遅くまで学習に付き合うこともしばしばありました。しかも、こんなサービス残業を繰り返してなお、気分は清々しいものでした。


はっきりいって、こんなこと普段の僕ならありえないことです。
自分の利害に一致しないことは基本的にしませんし、よほど気分がいいときでもない限り、ボランティアにあたるようなことはしません。
しかし、これが生徒からのお願いだといとも簡単にやってしまうわけです。ここから僕が学んだのは、やっぱり人を動かす力として、「信頼」に勝るものはないんだなということです。策を縦横無尽に張り巡らせて、人を自分の意のままに動かそうとするよりも、「信頼」という力一つでことに臨んだほうが効果は高いんじゃないかとすら感じています。


もちろん、信頼の送り手が生徒だから、という点も無視し得ないと思います。大人の世界にまで一般的に妥当させるには無理のある考えかもしれません。
でも、少なくともそうした可能性を信じることができるようになれたことは、この仕事をやってきて一番価値のある産物だったのではないかと思います。


僕は教師というものになりたい、あるいはなれると考えたことはありません。しかし、教育という行為の素晴らしさの一片には触れることができたような気がします。貴重な経験でした。